New ロンドナーになるのだ!

Twiggyをこよなく愛するチオリーヌのロンドンライフやイギリス人夫との国際結婚ネタをお届け!イギリスへのワーホリ、語学留学、国際結婚に興味がある方必読♪

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5.第1章はじまりのキス 5節自分への劣等感、将来への不安

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彩花が新しく見つけたパブはテムズ川沿いにある大きなパブで、水色と赤でペイントされたテムズ川のシンボル・タワーブリッジとシティにあるまゆ型の斬新なデザインのビル・ガーキンなどの高層ビルが重なるちょっと不思議な夜景が見えるところだった。古き良きものと新しいものが重なり合うロンドンの街を代表するような夜景で、ジョンもとても気に入ってくれた。

「面白いところ見つけたね。悪くないね、ここ。今日はちょっと強めのカクテルにしよう」

「そうだね。私も今日はカクテルにしようかな」

“悪くないね”なんて、正直に褒めないところがちょっとイギリス人っぽい。

今日何があったのかは、彩花の方から聞かないようにしていた。それは彩花自身が1番よくわかっているから。聞かれると一気に我慢していたものが溢れ出すことを。今とにかく飲みながら、チップスをつまんでたわいもない話をしたりするのが1番だ。

ジョンはいつもよりも速いペースで飲んでいて、彩花はちょっと心配になったけれど、そのお酒の飲み方すら彩花が落ち込んだことがあった時に飲むお酒の飲み方に似ていて、本当に痛いほど今日落ち込んでいることがわかってしまった。と、同時に年下のジョンが可愛くみえてしょうがなかった。

「今日はちょっとついていない日だったな」

「いつもキミはがんばってるし、たまにはあるわ。私も日本で銀行で働いてたし、気持ちはよくわかる。キミは怒らせようと思ってやったわけじゃないし、私はわかってるよ」

すると、ジョンは本当に小さな子どもみたいに大きな涙を流して泣き出してしまった。彩花が慌てて、ハンカチを差し出すと、ちょっと笑いながら恥ずかしそうに涙をふいて、本当はもっと要領よく仕事をこなしたいけど、1つのことを完璧にやらないと、次に進めないこと、同時期に入った同僚よりもうまく仕事ができていない自分への劣等感、将来への不安、きっとジョンが親にも言えず、ましてや同僚には絶対に言えないことを彩花に話始めたのだ。

「いきなり泣いたりして格好悪いな。ごめん。実はこんな、自分が今不安に思っていることとか話したのって初めてで、キミが今日飲みに誘ってくれて本当に良かったよ。ありがとう」

その瞬間彩花は自分でもわからないけれど、不意にぎゅっとジョンを抱きしめてしまった。もしかしたら、それは彩花が同じ気持ちで落ち込んでいた時に誰かにしてもらいたかったことなのかもしれない。

「ありがとう」

ジョンもギュッと抱きしめて、彩花の耳にそっとキスをした。

――ジョンにこのドキドキがばれていませんように… …。

帰り道、お互い結構飲んでしまったので、酔いさましをしながら帰ろうってことになって川沿いをずーっと歩きながらおしゃべりをした。ジョンの話は日本についてのことが多くて、もしかしたら彩花に気を使ってくれているのかもしれないけど、彩花はジョンと話せば話すほど、日本にジョンが来てくれないかなあなんて思ったりした。

――だってあともう半年もしたら日本に帰国しなくちゃいけないから……。
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公開日:
最終更新日:2015/07/31