New ロンドナーになるのだ!

Twiggyをこよなく愛するチオリーヌのロンドンライフやイギリス人夫との国際結婚ネタをお届け!イギリスへのワーホリ、語学留学、国際結婚に興味がある方必読♪

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16.第2章知らなくちゃいけないこと 5節イギリス貴族

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化粧直しをしたいと思い、トイレに向かう。長く続く廊下でさえ目がくらむほどの豪華絢爛さで、窓から見えるガーデンには大きな湖が見えてキラキラと輝いていた。ホールに戻る途中に同じく今日のパーティに招待されたのであろう同じ年くらいの女の子が、彩花に“とても素敵なドレスね”と声をかけてくれた。その言葉は彩花にとって、とても救いになる一言だった。
――ジョンと恋人みたいになれて、なんか一人で浮かれてたのかな。私。
「アヤカ」
「ジョン! すごくゴージャスなパーティね。こんなの初めてですごく感動してる」
「今日は一緒にいてあげられなくてごめんね。大丈夫?」
――きっと私がちょっと無理してるのがジョンに伝わっちゃってるんだ… …。
「全然平気。大丈夫だからみんなのところに戻っていいよ」
彩花はがんばって笑顔を作って、元気なふりをした。ジョンの大切な日であることはわかっていたし、そんな大切な日に浮かない顔を見せるわけにはいかなかった。
席に戻るとベスが声をかけてくれた。
「彩花、ガーデンはもう見た? もしよかったら案内するわ。きっと気に入ると思うわよ」
「ありがとう」
外の空気を吸ったら少し落ち着いた。ガーデンでは女性陣がグラスを片手に、美しいクイーンズ・イングリッシュで週末のパーティーの話や最近買ったドレスの話に花を咲かせていたり、知り合い同士を紹介し合ったりしていた。もちろん名前を呼ぶ時や紹介する時にはそれぞれの称号をしっかりとつけて。それを聞いていると、今日のパーティーにたくさんの貴族たちが集まっていて、ジョンがどれだけ煌びやかな世界で育った人なのかが分かる。
「アヤカ?」
「あ、ごめんなさい! ぼうっとしてた」

「もしかして、こういった社交界は初めて? 」
「社交界!? なるほど、こういうのが社交界っていうんだ」
「あなたのおうちはどんな感じなの?」
「… …。本当に一般家庭の家で… …。日本にはもうこんな風な貴族という階級は残っていなくて、昔貴族の家系だった人たちはいるけれど、こんな晩餐会を開いたりはしてないと思うわ」
「じゃあこういうところに来るのは本当に初めてなのね。 普段はどんなパーティをするの? アジアのパーティーってすごく興味があるわ。ジョンはこの世界しか知らないのはよくないと言って、日本に住んでみたり、銀行に勤めたりいろいろチャレンジしているのよ。いつも日本は素晴らしい国だったと話していたわ」
「5人くらいでレストランで集まって食事会をしたりするのが、普通の誕生日パーティだと思うけど。日本ではね! 私も聞きたいことがあるんだけど、キミたちはどういう一族なの?」
「なるほど、そこから説明した方がいいのね。わかったわ。オズバーン家は500年前、羊毛商を営んでいたの。その時に国に対してたくさんの献金を行って、伯爵の称号をいただいたのよ。それが代々受け継がれていて、ジョンの代でちょうど8代目になるの」
「伯爵って何をするの? 」
「基本的にロンドン郊外の土地は貴族が保有していることが多くて、我が一族も郊外に5つのカントリー・ハウスを持っているのよ。カントリー・ハウスっていうのはまあ別荘みたいなものかな。昔は、社交界の用途によって使い分けてたみたいなんだけど、今はそこをホテルとして運営しているよ。だから、ジョンはその経営に携わることになるかな」
「すごい世界だね」
「私の学生時代の周りの友人たちも一族のカントリー・ハウスを一般公開してるって言っていたわ。あとは結婚式場にしたりとかね」
「じゃあ普通貴族は外の企業に出て働いたりはしないの?」
「もちろんそういう人もいるわ。今だって称号は持ってるけど一族自体は昔のような生活を送ってない人もいるみたい。滅びてしまう貴族もいるしね。ところであなたは将来どうしたいの?」
「私は1年間の大学院生活で、あと4か月もしたら日本に帰国予定。その後は、日本に戻って金融関係の仕事を探す予定よ」
「格好いいわね、アヤカ。イギリスで仕事を見つけるということも考えているの?」
「できればそうしたいけど、こっちで仕事を探すのはアジア人の私にはなかなか難しいことなの」
「そうなのね。ジョンはあなたのことを知性もあって教養もあるとても素敵な人だと話していたわ」
「本当に?」
「もちろん嘘じゃないわよ。じゃないと、ジョンは今日あなたをここには連れてこなかったと思うわ」
「でも、私は今日実はドレスコードの意味もよくわかっていなかったの… …」
「文化が違うもの。そこは気にすることじゃないわ、アヤカ。普通社交界デビューは16歳でなんだけど、まあそれは国が違うし… …。でもあなたはジョンのことを愛してるんでしょ?」
「そうだけど… …」
――そうだけど、普通に好きになった人がまさかイギリス貴族で私の育ってきた環境とは全然違っていて、今まで私と過ごしてくれた時間、ジョンは結構無理をしていたんじゃないかって思った。
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公開日:
最終更新日:2015/07/31