New ロンドナーになるのだ!

Twiggyをこよなく愛するチオリーヌのロンドンライフやイギリス人夫との国際結婚ネタをお届け!イギリスへのワーホリ、語学留学、国際結婚に興味がある方必読♪

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19.第2章知らなくちゃいけないこと 8節忘れられない夜

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「今日は皆さんにお話があります。こちらは今、私がおつきあいさせていただいている彩花です」
周りが一気にざわついた。そりゃそうだろう。だって、こんなにきらびやかな人たちの前に突如として現れた東洋人の私が次期伯爵になる人の恋人だなんて…… でも今こんなにたくさんの人がいる前で、逃げ出すことも泣くこともできない。ジョンに恥をかかせるようなことだけはできない。彩花は自分ができる限りの堂々とした態度をとらなければと胸を張った… …
「今宵、私は彩花さんとダンスを楽しませていただきたいと思います。みなさまもお楽しみください」
ジョンは彩花の前にひざまずいて、彩花の手を取りはっきりとそう言ってにっこりと笑った。
「僕と踊っていただけますか?」
――ジョンは本当に私の事を愛してくれていて、真剣にこんなに大切な場でその思いを伝えてくれたんだ。今まで生きてきて、こんなに情熱的でびっくりするような告白なんてされたことない。私の答えは1つしかない。ジョンの事が大好き。本当に大好き。
「もちろん」
その瞬間、一斉に大きな拍手が起こって彩花はさっきまでみじめな気持ちになってた自分が恥ずかしくなったの。ジョンは、一瞬いつものジョンに戻って『やったあ!』と言って彩花をギュッと抱きしめた。
彩花は社交ダンスなんて踊ったことなかったけれど、ジョンがなんとかエスコートしてくれて踊ることができた。踊れたというより乗り切ったって感じではあったけれど。
「両親にキミを紹介したいから、こっちに来てくれる?」
彩花は正直この時すごく怖かった。だって、昔ジョンが好きだった人がイギリスに遊びに来た時もこんなふうにきっとジョンはその女の子をご両親に紹介したのだろう。その後からその女の子はジョンと連絡を取らなくなって…… 何かあったんだろうけど、彩花には実際何があったのかはもちろんわからない。
「お父様、お母様、こちらの方が今私がお付き合いさせていただいているアヤカです。日本から今留学で来ていて、とても優秀な方で、尊敬できる方です」
「はじめまして。まあ、なんて可愛らしい方なんでしょう。ジョンをよろしくお願いしますね」
ジョンのご両親は、すごくフランクで、貴族なんだからもっとツンとしているのかと思っていたから驚いた。
「ジョン、再来週のお茶会にはお誘いしたの? ぜひ来ていただきましょうよ」
「そうですね。再来週の土曜日に別の場所でお茶会があるんだけど、来てくれるかい?」
「もちろん。お伺いさせていただきます」
ジョンのご両親にも挨拶して、ほっとした。というか実は彩花は恋人のご両親にご挨拶なんてしたことはなく、ちゃんと挨拶できたのかわからなかったけれども。
「アヤカ、こっちにおいで。僕が小さい頃過ごした部屋を見せてあげる」
ジョンの部屋はジョンが家を出たあともそのままにしてあるらしいけど、もうこの映画の世界のようなお屋敷の子ども部屋なんて想像できなかった。

「ここだよ」
「すごく広い部屋だね」
大きな天蓋付きの子どもには大きすぎるほどのベッドで、大理石の天板がついた白い足付きのビクトリア調のテーブル、そして大きな窓からはお庭が一望できた。
「ナニーと一緒に過ごす部屋だからね。1人部屋よりはちょっと広いかな」
「勉強や遊びはナニーと一緒にって感じなの?」
「そうそう。母や父は忙しいからね。基本はそうかな」
「へえ。そうなんだ。ねえ、私と一緒にいて辛くない?」
「なぜ?」
「私とデートしても本当に一般市民の行動なわけじゃない? ファーストフードだっていくし、セールがあればそれに一目散に走っていくし。キミは私にご飯を作ってくれたりするけど、それももしかして無理したりしてないよね?」
「全く無理してないよ。むしろすごく楽しんでる。初めて1人で暮らしたとき、僕は本当に何もできないんだって気づいたんだ。マナーや勉強がいくら身についていたって、自分のことは一切できなかったんだよ。電子レンジにアルミホイルを入れて使ってはダメなことすら知らなかったくらいだよ。だから、キミのために料理を作ったりすることも、キミと一緒にファーストフードに行くこともすべてが新鮮で僕にとってはすごく楽しいことなんだ」
実際今でも力のある貴族の奥様達は一切家事をやらず、すべて召使いが準備するんだという。朝のアーリー・モーニングティーを召使が運んで来てベッドに入りながらそれを楽しみ、日中は友達とお茶やお菓子を楽しみ、夜には何かしらのパーティーに参加する。子どもの面倒はナニーがすべてしてくれるし、家の事はすべて召使たちがやってくれるからだ。だから、ジョンはお母様の手料理を一度も食べたことはないし、掃除している姿も一度も見たことがないんだという。だからこそ、今それを自分自身でやっていることがとても楽しいんだと言った。
「貴族の暮らしには、もちろんその良さがあると思うけど、僕はいろんな世界が見てみたいと思ったんだ。そして、それぞれの世界にそれぞれの良さがあって、日本の子たちは自分でなんだってできるだろ? それは本当にすごいことだと思うよ」
なんだか彩花は褒められて照れくさくなってしまった。
「そうだ、ジョンはもちろん馬に乗れるんだよね? 」
「もちろん。子どもの頃は乗馬のレッスンが週3回あったからね」
「うわあ。本当に王子様みたい」
「じゃあ、アヤカはお姫様かな? 」
ジョンは笑いながらお姫様抱っこをして彩花をベッドまで運んだ。まだみんなの声がお庭から聞こえてた。でも彩花達はもうそんな声すら聞こえないくらいお互い夢中でキスをしたの。2人にとってまた忘れられない夜になった。
2章 おしまい
●目次
●『第3章試練 1節レディーとしてのたしなみ』へすすむ

公開日:
最終更新日:2015/07/31