New ロンドナーになるのだ!

Twiggyをこよなく愛するチオリーヌのロンドンライフやイギリス人夫との国際結婚ネタをお届け!イギリスへのワーホリ、語学留学、国際結婚に興味がある方必読♪

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24.第3章試練 5節私は彼を信じてる

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不安な気持ちで約束の日を迎える事になった。国際的なボートレースのイベントのヘンリー・レガッタは150年の歴史を持つ伝統的な行事だ。なのだが、勝敗を楽しむというよりはこれも上流階級の人たちの出会いの場であることは間違いなかった。エドワード王朝時代のガーデンパーティーのような会場があって、テーブルの上にはイチゴやジャンパンが用意されていて、飲みながらおしゃべりをするというのが彼らの楽しみ方なのだ。もちろんこのイベントにもドレスコードがあり、男性はスマートなストライプのブレザーに蝶ネクタイ、女性は大きなつばのあるおしゃれな帽子にひざ下のドレスが必須だ。彩花はまたベスに教えてもらったコーディネートで、ドレスコードはばっちりだった。でも、またその場にはエイミーがいて、ジョンを独り占めしている。

「アヤカ、論文進んでる? 最近私も忙しくってジョンと全然話していないからあなたの話を聞いていないけど、仲良くしている?」

顔の4倍はありそうな帽子をかぶったベスが声をかけてくれた。

「うん。頑張ってるよ。最近ジョンも仕事が忙しいみたい」

「どうかしたの? 今日もエイミーがジョンにべったりね。昔からあの2人仲良いわね」

彩花の心はズキズキした。

――昔から仲良かったんだ。やっぱり。私の知らないジョンをたくさん知ってるんだろうな。

「いや、ちょっと論文で行き詰ってたけど今日来てよかったなあって。いい息抜きになりそう。ところで、あの2人はそんなに仲良しなの?」

「それはよかったわ。そうね。仲良しといっても兄弟みたいなものよ? エイミーがロンドンに遊びに来るときは、ジョンの家に泊まったりしてるみたいね」

――え? 知らなかった… …。そうなんだ。

エイミーは彩花と目が会うたびにすこし勝ち誇ったような顔をしているように彩花は感じた。ベスは彩花にすごくよくしてくれるけど、この相談は出来るはずがない。彩花はただのジョンの恋人で、エイミーは昔からの幼馴染のようなものだ。彩花がエイミーの事を話したとしたら、もしかしたら自分が軽蔑されることになるかもしれない。

――つらい… …。

「アヤカ」

気づくと隣にエイミーが立っていた。

「なに?」

「ちょっといい?」

「何かあるならここで話したら?」

「いいからちょっとこっちに来てよ」

エイミーの甲高い声にイライラしながら彩花は仕方なくついていく。

「よく今日来れたわね。前も話したけど、そろそろ自分の立場自覚したら? あなたはジョンにもふさわしくなければ、この場にもふさわしくないのよ。恥ずかしいと思いなさいよ。東洋人のあなたにはそんな帽子も似合わないし、見てるだけでイライラするわ」

「あなたがジョンの事好きなのはわかるけど、ジョンが私を選んでくれているの。だからそんな風に言われたって、私はジョンを諦めないし、ジョンに見合うように頑張っていくつもりよ」

「あなたみたいな人が努力しても無駄なのよ!? わからないの?」

「ごめんなさい。私わからないわ。努力して無駄なことなんてないはずよ」

「あなた本当にバカなのね。ワーキングクラスはどう頑張ったって貴族にはなれないのよ?」

「それはわかってるわ。でもジョンが私の事を愛してくれていて、私の事を恋人だって言ってくれている以上、私は彼を信じてる。あなたが何を言っても、私は彼を信じてるの」

エイミーはまだ何か言いたげだったけれど、何も言わずその場から走り去っていった。きっと昔の彩花だったらこんな風に立ち向かうことはできなかった。ただただ、彩花はジョンの事を信じていた。優しいキス、彩花を抱きしめる大きな胸と優しい笑顔だけが支えだった。
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公開日:
最終更新日:2015/07/31