New ロンドナーになるのだ!

Twiggyをこよなく愛するチオリーヌのロンドンライフやイギリス人夫との国際結婚ネタをお届け!イギリスへのワーホリ、語学留学、国際結婚に興味がある方必読♪

*

28.第3章試練 9節人種差別

photo28

「アヤカ、ちょっと」

「何?」

そう言ってトーマスはいきなり、人気のない路地に彩花を引っ張り、無理やり彩花にキスをしてきた。必死で抵抗しても、男の人の力にはかなわない。彩花を壁に押し付け、体中を触ってくる。彩花にとって人生の中でも感じた事のない気持ち悪さだった。

「ちょっとやめてよ!」

「なんでだよ。土曜日の夜に飲みに行って何もなしで終わりなんてありえないだろ?」

「ふざけないでよ。私はキミがそんな事すると思っていなかったわ」

「キミ日本人なんだろ? 日本人は青い目でブロンドの男にすぐついてくるくせに、どうせキミもそんな感じなんだろ?」

「キミそれ本気で言ってるの? たとえそういう子がいたとしても、私はそうじゃないわ。馬鹿にしないでよ」

「ヨーロッパの人間がキミたちみたいな人種に本気で恋愛感情抱くとでも思ってるわけ? 笑わせてくれるね」

――最低だ。

アジア人はすぐに体の関係を許す軽い人種だと思われていることが多々あるらしく、彩花も噂には聞いていたけれど、まさか自分がこんなにひどい目に合うとは想像もしていなかった。その場から走って逃げた彩花は、帰りのバスの中で、トーマスに押さえつけられた時にできた手の擦り傷を見て涙が出てきた。

たまに人種差別的な発言を言われる事はあったけれど、身近な相手からこういう目に合うなんて恐ろしくて、人間不信になってしまいそうだった。同時に、ジョンの優しさを思い出して余計に涙が止まらなくなった。どんな時もレディーとして彩花に接してくれた事、一度だって彼から人種差別的な発言なんて聞いたことがない事、彩花がジョンのためにしてあげた事に対して心からいつも“ありがとう”を言ってくれた事。

――私に隙があったからいけなかったんだ… …。

家に帰っても涙は止まらず、気づいたら泣き疲れて寝てしまっていた。それから図書館でトーマスを見ることはない。さすがにあんな暴言を吐いておいて、のこのこと彩花の前に現れるほどの勇気はなかったのだろう。

ピピピッ、ピピピッ……

知らない番号からの着信に、出るか出ないか彩花は迷った。

――まさか、トーマスじゃないよね… …。

大学で姿は見ないとは言っても、ロンドンにいることは間違いない。でもなぜか気になって電話に出ることにした。

「はい」

「アヤカ? 私ベスよ。突然電話しちゃってごめんなさいね」

「ベス? どうしたの?」

「ジョンからあなたと別れたって聞いたの。ジョンはあなたの気持ちをわかってあげられなかったって言ってたわ。私はすごくあなたとジョンが一緒にいるところが好きだったの。だから何か本当は言いたいことがあったんじゃないかしらと思って。ごめんなさい。私あなたの相談に乗ってあげることができなかったわ。でも、私はあなたと友達として付き合っていきたいの」

ベスは彩花に対して階級の違いを見せつけることなんて一度もなかったし、ジョンもそうだった。ジョンとは終わってしまったけれども、ベスとはこれからも仲良くしていけるとするならば女友達として終わってしまった恋の話をするのはいいかなと彩花は思った。

「ベス、今日の夜一緒に食事に行ける?」

「もちろん大丈夫よ。イタリアンのお店予約しておくわ」

「ありがとう」

夜7時にベスとスローンスクエアの駅前で待ち合わせした。ヴィヴィアン・ウエストウッドの本店や現代アートのエキシビションを積極的行うサーチギャラリーなどが立ち並ぶキングスロードが走るスローンスクエア付近には、オシャレなイタリアンのお店が数多くある。ベスが選んでくれたレストランは静かに話ができるこじんまりとしたレストランだった。
●目次
●『10節努力はきっと無駄にはならない』へすすむ

公開日:
最終更新日:2015/07/31