New ロンドナーになるのだ!

Twiggyをこよなく愛するチオリーヌのロンドンライフやイギリス人夫との国際結婚ネタをお届け!イギリスへのワーホリ、語学留学、国際結婚に興味がある方必読♪

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36.第4章さよなら 3節最終案内

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帰国の朝、一番フラットで仲良くしてくれた真理にいつもの朝みたいに挨拶して家を出た。ヒースロー空港までは電車で1時間。いきなり停電したり、謎の停車を繰り返す地下鉄ともお別れだ。
空港で自分の乗る便を確認して、コーヒーとサンドイッチをかじりながら時間を潰した。日本に帰ったら仕事探しが忙しくなるので、ロンドンタイムになってしまった体を叩き起こさなくてはならない。基本的に15分遅刻はOKといったヨーロッパの文化は日本では通用しない。
「よし、そろそろいくかあ」
手荷物重量ぎりぎりまで詰め込んだバッグは重たくて、渡英した日の事を思い出す。日本に帰ってからの1週間筋肉痛は確実に約束されていた。
セキュリティーゲートに並びながら、たくさんの恋人たちのお別れのシーンを目にする。見送りで最大一緒にいられるのはここまで。本当に最後の最後までジョンとは連絡を取らなかった。
――本当にお別れだ。ロンドンの街を歩いていたら、どこかで会うんじゃないかってちょっと期待しちゃってたりしてたけど、さよならを言ってから一度も会うことはなかったんだ。寂しいけど、これでよかったんだね。きっと。すべての事に対して“ありがとう”と言うことを教えてくれた街。辛い時も悲しい時も、誰かが街で笑いかけてくれた街。本当にさよなら。ロンドン。そしてジョン。
あと2、3人で自分の番がくるという時に、ふと誰かに呼び止められた気がした。
「アヤカ」
「え… …。何してるの? ちょっと待ってて」

彩花はセキュリティーゲートに並ぶ人たちを押し分けてジョンの元に向かった。ジョンは彩花が駆け寄ると死んでしまいそうなほど彩花を抱きしめて、
「キミがこの国からいなくなるなんて僕にはやはり耐えられない」
「… …」
ロンドン生活最後の最後まで映画のような展開を巻き起こしてくれるジョンにもうなんというか、もう何も言えなくて、ただジョンに抱きしめられたまま彩花はその場に立ち尽くしていた。
「ルークが僕に連絡をくれたんだ。本当はキミがまだ僕の事を思ってくれているという事、今日の14時の便で帰国すること」
ジョンに抱きしめられると、ジョンと過ごした時間がショートフィルムのように彩花の頭の中でよみがえった。
大好きなジョンの匂い、腕、首筋、やわらかい髪の毛、彩花を見つめる青い瞳全てが彩花を包み込む。ただ今はお互い何も言わずに見つめ合う事しかできなかった。
彩花の乗る便の最終案内の放送が空港を駆け抜ける。
「ジョン、私ね… …」

そして5年が経った今。栗毛色のふわっとした髪をなびかせた可愛い女の子がハチに刺されそうになりながらもいい香りのするイングリッシュローズに鼻を押し当てて笑っている、そんな様子を彩花はミルクティーを楽しみながら見つめていた。手元に置いていたスマートフォンにメッセージが届く。
“今日は早く帰れそうだよ!君を抱きしめることが待ちきれないよ。愛してる ジョン”

おわり
●目次

公開日:
最終更新日:2015/07/31